彼女は、夢があると言った。そのための準備をするために、まずは公務員になりたいのだと。
私は、ストレートに夢を目指した方がいいのではないかと言った。徒然草で、すぐに目標に向かわず、回り道の準備ばかりをして、年を食ってしまった人の話をした(あとで調べたら188段だった)。
親に勘当されるかもしれないと、彼女は言った。
私も親の端くれだから、親の気持ちはわかる。心配するだろう。でも、30を過ぎて、「あー、やっぱりやっておけばよかった」と後悔して欲しくもないだろう。
親が反対するのは、ある種の壁である。わざと、の場合もある。少し反対したぐらいでやめるのなら、その夢はその程度ということだ。
親の反対を押し切って、あるいは、内緒にして、彼女の夢は実現するだろうか。
夢が実現したとして、ちゃんと食べられるかどうかもわからない。
夢を諦め、公務員になった方が「幸福」なのかもしれない。
いずれにせよ、自分の道は自分で決めるしかない。
彼女は、すっきりした表情で去って行った。