頭木弘樹編訳「絶望名人カフカの人生論」を読む。
本書を手にとったのは、ひと月ほど前、仕事やら人間関係やらで悩んでいた時期だった。
カフカといえば、子どもの頃、朝起きたら虫になっていたという「変身」を読んだような記憶があるくらいで、特に関心はなかったが、カフカの残した数々の言葉には、癒された。笑えた。
編訳者の頭木氏は次のようなことを語っている。辛いときや悲しいときには、それにふさわしい音楽があるように、それにふさわしい言葉があると。そして、カフカの言葉がぴったりだというのだ。
「いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。」
「ぼくは人生に必要な能力を、なにひとつ備えておらず、ただ人間的な弱みしか持っていない。」
ネガティブな思考をし、唯一、病気になったときだけ救われたというカフカに比べれば、私の悩みなど、お笑いに過ぎない。
進学、就職、結婚、離別…。人生の節目節目で、うまくいかないことが起きたら、逆説的な元気をくれる本である。