安倍内閣は外国人労働者の受入れを拡大する法案と水道事業の民営化を可能にする法案の成立を急いでいる。
深刻な労働力不足を何とかしなければならない。それは理解できる。
が、仮に30万人程度を受け入れるというレベルの話なら、非正規雇用者の正規雇用化を促進したり、待遇を改善したり、あるいは育児や介護で働きたいけど働けない人の環境を急いで整備すれば足りるように思える。
現在でも、技能講習の名目で、発展途上国の若者を時給換算で数百円で雇用している。まずは、この制度の見直しを優先すべきであろう。受け入れるからには、雇用にも「おもてなし」の精神が必要である。
戦後、西ドイツは労働力不足を補うためにイスラム教国トルコからの労働者を受け入れ、その後ドイツ人の失業者が増加すると、宗教的・民族的な対立を招いた。日本という国の骨格をどうするのか、文化や伝統をどのように守っていくのか、きちんとした議論が必要だろう。
地方自治体の中には、老朽化した水道施設を改修し維持できないことろがあるという。維持するための費用を確保するために、水道料金を値上げすると、ますます人口が流出するというジレンマに陥る。
それを民間に委ねるとうまくいくのか、と考えれば、新たな不幸を招きかねない。新たに、企業の利益を確保する必要性が生じるので、自治体職員より低賃金で雇うことを考えるだろう。やがて中心部から離れた住居へは割増の水道料金を徴収するようになり、それが全体に波及していく。最悪の場合、コストダウンのために水質を下げる。
現に水道事業を民営化した外国では、再公営化の動きがみられるらしい。
労働力にしろ、水道にしろ、日本社会から活気と余裕が失われつつある。
その根本には少子化がある。
結婚しない自由、生まない自由は尊重したうえで、生みたい人には今以上に手厚くサポートすることを急ぐ必要があると、2つの法案は教えている。